

時の首相が『観光立国ニッポン』と公の場で初めて観光について語り、大々的なコマーシャルが作られたのが2003年。観光産業にとって歴史的な日からはや7年という月日が流れ、今、観光旅行の内容が大きく変わろうとしている。「あの場所に一度は行ってみたい」「あの国に行きたい」という漠然とした大きな憧れから「あそこのアレを食べてみたい」とか「あのスポーツがしたいからそこに出かける」というように自分の趣味嗜好に添ったものが多くなってきている。「観光は21世紀の基幹産業のひとつ」とまでいわれた観光旅行はこれからどのように変身していくのだろうか。
ひと昔までは、どこかへ行きたいという気持ちがあれば、その時点で旅行計画が始まっていた。昔は旅行へ行くといったら、人生のなかでも一大イベントだった。人々は「ハワイへ行く」「アメリカへ行く」と口々に憧れの土地を口にし、出かけることがステイタスであり、自慢でもあった。ところが今日では「先週、パリへ行ってきた」とか「今年で3回目の中国」という様に旅行が日常茶飯事になり、世の中が経済不況だからといって日本人の旅行に出かける旅行人口の割合は減る傾向はなく、むしろ旅行に出かけようとする人の割合は増えている。旅行のスタイルも昔と比べると多種多様になり、個人旅行が全体の約9割。宿と交通機関の組み合わせた旅行プランを利用し他は自由行動というものを多くの人が利用している。そしてあとの1割は昔ながらの旗をもった添乗員が同行する旅行スタイルとなる。こういうと、もはや旅行は個人が自由に出かけているものの様に思えるかもしれないけれど、実は宿と飛行機などの交通機関の手配は旅行会社が行っていることが多い。もちろん、なかには自分で現地の宿を予約し、自分で新幹線や飛行機のチケットを手配してという人もいるがそれはごく一部。私達が個人旅行だと思っていた旅行も実は旅行会社のパッケージツアーだったというのが現実なのである。
このような形の旅行が増えた背景はインターネット時代が大きく影響しているからという声も大きい。このインターネットの特徴はリアルタイムで不特定多数のお客様と直接やりとりができるということなのだそうだ。旅行会社はインターネットを通して、多くのサプライヤー(商品、ここでは旅の現地情報の供給者)からの情報を様々に組み合わせ、多くのプランの旅行商品をつくり出すことができる。組み合わせひとつで、同じプランの旅行も雰囲気はガラリと変わり、それぞれの顧客のニーズにあったプランをフリースタイルを取りこむことで、顧客一人一人異なる旅を提供できる。これが経済不況の時代であっても旅行人口を増やしているのだろう。

昔はいざ旅行へ出かけるにしてもどこか仰々しく、構えて取り組む一大イベントだった。しかし今日では交通機関も発達し、遠い外国が隣の外国という感覚に変わってきており、まるで隣街へ出かけるように旅を満喫している人も少なくない。さらに旅先で何をするべきかということがキーポイントになっている。例えばハワイで流行りのロミロミマッサージを体験し心身共にリラックスできたとか、現地のこだわりのロコフード(ローカルフード)を食べてきたとかなど、参加者一人一人の目的を満足できたときに、その旅は成功したという達成感が生まれるそうだ。これは旅行という意識がその場へ行けばよかったという感覚から行ってこれを体験してよかったという感覚になっている。まるで旅行は生き物のように進化し、変化し続けているのだ。
数々の情報のなかから、自分にあった情報だけをうまくピックアップし、組み合わせて自分の目的を果たすのが今の旅行の傾向といえよう。
知っておこう! 旅行の実態1 食品業界と同格の消費ぶり
2007年、国内での旅行総消費額はなんと23.5兆円。そのなかで観光産業への直接消費額は11.8兆円だった(日本旅行業協会 JATA調べ)。これは国内総生産 GDPのうち、2.3%に相当している。これは食料品業界の消費額の13.0兆円と比較しても大差なく、観光産業は日本経済のなかで上位にランクを占めているといえる。このような結果を目にすると「旅行業界は好景気」というイメージを持ってしまうが、1990年後半時代には9.92兆円あったのが現在は7.79兆円と減少傾向にある((財)日本交通公社「旅行年報」調)。しかし消費金額は減りつつも、旅行へ出かけようとする回数は同じようで、旅行をリーズナブルに楽しもうという考えが主流になってきているように思える。