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◯◯を斬る! : メタンハイドレート問題を斬る! Vol.13 - OCN TODAY

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◯◯を斬る!

メタンハイドレート問題を斬る!

今回の取材者

JOGMEC メタンハイドレート研究チーム 工学博士 中塚善博氏

メタンハイドレートは日本近海に特別多く存在している?

「メタンハイドレートは日本周辺に限らず、世界各地の永久凍土層や深海の海底面下に分布しています。メタンハイドレートの探査には石油や天然ガスを探すときと同じ『地震探査』という手法が用いられますが、メタンハイドレート研究で世界のトップレベルにある日本には、そうしたデータが豊富にあるため、『世界のメタンハイドレート分布予想図』では日本近海にメタンハイドレートが集中して存在しているように見えます。しかし、実際には調査がされていないだけで、日本近海以上にメタンハイドレートが豊富な地域はほかにもあるはずです。例えば、アメリカではメキシコ湾に相当な量のメタンハイドレートがあると考えられています」

世界のメタンハイドレート分布予測

日本以外の国のメタンハイドレート研究は、どこまで進んでいる?

メタンハイドレート研究のトップランナー

「自国で石油や天然ガスが豊富に生産できる国は、とりあえず今あるエネルギー資源を使っていけばよいという考えです。したがって、すぐには商業生産に結び付かないメタンハイドレートに関する研究・調査は二の次、三の次で、あまり進んでいるとは言えません。最近では、韓国やインドなどがメタンハイドレートの調査研究を本格化させていますが、メタンハイドレートの調査・研究は日本がトップを独走していると言っても過言ではないと思います」

モデル海域以外にはメタンハイドレートはどのぐらいあるのか?

コストがかかる

「モデル海域である東部南海トラフ以外の海域のメタンハイドレートの状況については、詳細な調査を行う必要があり、現在のところはっきりしたことはわかっていません。今後、調査研究対象を東部南海トラフ以外の海域にも広げることも考えられますが、まだまだ先の話になるでしょう。時間とコストの問題から日本全体の詳細な調査を行うことは難しいですが、開発可能性を持つメタンハイドレートが存在している可能性は大いにあると考えられます。東部南海トラフで、メタンハイドレートが資源になりうることがはっきりすれば、それ以外の海域でも民間業者による探査が始まることが予想されます」

メタンハイドレートの生産手法と賦存(ふぞん)形態
「メタンハイドレート実用化のカギを握るのが、メタンハイドレート層からメタンガスを取り出す技術です。液体である石油や気体である天然ガスは井戸を掘れば勝手に噴き出してきますが、固体で存在するメタンハイドレートの生産には、地層の中で水とメタンガスに分解し、メタンガスとして採取するという“ひと手間”が必要です。低温・高圧で安定するメタンハイドレートの分解には、温度を上げる『加熱法』、圧力を下げる『減圧法』などの方法がありますが、『我が国におけるメタンハイドレート開発計画』フェーズ1の実験・シミュレーション結果などから、『減圧法』が効率のよい経済的な生産手法であることがわかっています」

採取された天然のメタンハイドレートを含む地層。砂粒の間に白い粒のようなメタンハイドレートが存在している。 「日本周辺に存在するメタンハイドレートには、海底面の近くや泥層の中に塊で存在するもの、砂粒の隙間に存在するものなど、さまざまな形態があります。モデル海域である東部南海トラフの『砂質層孔隙充填型メタンハイドレート』は、砂粒の隙間にメタンハイドレートが存在しています。この存在形態は石油や天然ガスとほぼ同じで、既存の生産手法、機器が応用できるため、開発に最適と私たちは考えています。一方、海底面の近くや泥層の中に塊で存在するメタンハイドレートの生産法に関しては、全く違う発想が必要になってくるでしょう」


フェーズ1の成果は?

「『我が国におけるメタンハイドレート開発計画』フェーズ1では、モデル海域である東部南海トラフにおいて、石油や天然ガスを含む地層を調べるために用いられる『地震探査』と呼ばれる探査法、そして掘削調査を実施しました。その結果から確率論的手法を用いて、東部南海トラフ海域におけるメタンハイドレートの原始資源量(メタンハイドレートの中に存在するメタンの量)の合計を1兆1415億m3と算出しています。これは日本が消費する天然ガス使用量の7年分(2005年の年間使用量を基準とした場合)に当たります。7年分というと大きな数字ではないように聞こえますが、大きな天然ガス田クラスに相当する規模です。調査海域だけでもこれだけの量のメタンハイドレートが確認されたことは注目に値します」

2002年、メタンハイドレートを探査する地震探査船。

「ある程度の規模をもち、メタンハイドレート含有率が多い、つまり開発可能性が高い『メタンハイドレート濃集帯』を発見する手法を確立したことも大きな成果です。また、生産手法に関して言えば、効率よく経済的にメタンハイドレートを生産する手法として『減圧法』が有効であるという結論に到達しました。カナダの永久凍土地帯における世界初の陸上産出試験でそれを実証したことは、フェーズ1最大のハイライトといえます」


メタンハイドレート開発による環境への影響は?


メタンハイドレート開発に伴う環境への影響を心配する声もあるが……。

「メタンを主成分とする天然ガスは、燃焼する時に生じる二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物の量が石油や石炭に比べて少ないため、クリーンエネルギーとして注目されています。しかし、その一方で、メタンガスそのものは、二酸化炭素の20数倍もの温暖化効果をもつ“温室効果ガス”ですので、メタンハイドレート開発でメタンが大気中に放出することは避けなければなりません。しかし、『減圧法』を使った砂層中のメタンハイドレート濃集帯の開発については、安全に行われている天然ガス開発と同じですので、その心配はほとんどないと考えています」

「メタンハイドレートは低温・高圧の環境では固体として安定しているので、減圧法では、井戸の水をくみ上げて減圧することでメタンハイドレートを“強制的”に分解しています。もし、生産機器や設備が壊れたとしても、海水が井戸に流れ込んで圧力が高い状態に戻るので、メタンハイドレートの分解は止まり、メタンガスの発生もストップします。井戸の中に残っていたメタンガスが少し出るぐらいで、メタンガスが連続的に噴き出すということはないと考えております」

「メタンハイドレートの分解・生産によって、大きな影響を与えるような地層変形が生じることもまず考えられません。これまでの研究から、地層変形として地盤沈下のような現象が生じることも検討されていますが、その大きさは水深500m以深の海底面で数十cm程度と考えられています。海底地すべりに関しても平たんな場所を選んで開発すれば問題ないと考えています。ただし、メタンハイドレート開発に伴う環境へのさまざまな影響については、まだわからない点も多くありますので、開発研究調査を進める一方で、環境への負荷についても引き続き調査を行っていく予定です」

実用化に向けた今後の課題は?

「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」は、2009年度からフェーズ2に突入した。フェーズ1には約290億円が投入されたが、フェーズ2では、それ以上の予算が見込まれているという。フェーズ2の一番のハイライトは2012年に日本周辺海域で実施される世界初の海洋産出試験。この試験の結果を踏まえて、今後のメタンハイドレート開発の方向性が明らかになり、世界のメタンハイドレート研究にも動きが生じるのではないかと考えられている。

「『我が国におけるメタンハイドレート開発計画』では、2018年度にはメタンハイドレートの技術基盤整備を目指しています。その後は民間企業が探査・試掘などの調査・研究を行い、商業生産の可能性を探ることになります。実用化にあたっては、例えば今の原子力がメインになっているようなインフラ自体も考え直す必要が出てくると思います」

実用化は、まだ先の話になりそうだが、次世代エネルギー資源としてのメタンハイドレートには、ますます大きな期待がかけられている。

取材協力:独立法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)



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