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◯◯を斬る! : TPPを斬る! Vol.11 - OCN TODAY

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◯◯を斬る!

TPPを斬る!

聞きなれない言葉TPP(Trans Pacific Partnership)が日本を揺さぶっている。日本語で環太平洋戦略的経済連携協定というこの協定は、アメリカ、東南・東アジア、太平洋側の南米諸国、オーストラリアなどのオセアニア諸国など、太平洋を取り囲む国々による自由貿易圏をつくろうという構想だ。内閣、経団連、経済産業省などが主導で、参加をめざす方向で議論が進められているが、反対の声も多い。TPPはなぜ物議をかもすのか。自由貿易圏ができるとどうなってしまうのか。そのメリットとデメリットを整理し、TPPの実態について紹介する。

TPPって何?

最近話題のTPPの発端は、2006年に結ばれたシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国による通称「P4協定」と呼ばれるFTAだ。そのFTAの特徴は、農林水産物を含め原則、すべての品目について即時、または10年以内に段階的に関税を撤廃すること。ここにアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアなどが続々と参加を表明したことにより環太平洋地域による経済連携協定構想が浮上、それがTPPなのだ。すなわちTPPはFTAの発展版と考えてもらえれば問題ない。

当初のP4協定の原則を継承し、TPPは貿易において原則すべての品目で関税が取り払われる。関税がなくなることで、各国の貿易は拡大し、国際間の物流が活発になるなどして、経済発展につがるとされる。

現在は参加を表明している9カ国で交渉が続けられており、2010年10月1日、菅直人首相が所信表明演説の場において、日本もTPP交渉参加を検討すると発言。TPPは重要政治課題へと急浮上した。

TPPが日本にもたらすメリットとはどういったものなのだろうか。TPP参加推進を主導する官庁のひとつである経済産業省経済連携課の下世古光可課長補佐に話を聞いた。

    <用語解説>
  • FTAFree Trade Agreementの略称。自由貿易協定。通常、各国は自国の経済を保護するために、海外からの物やサービスの流入に関税をかけたり、規制をかけたりしていた。その制限を取り払うことで、経済的には自由貿易によって、スケールメリットの拡大や国内経済の活性化など、政治的には国と国の関係が円滑になったり、貿易上の問題点や労働力問題などが解決されたりすることをめざす国家間の協定。
  • 関税:物品を輸出入する際に、課せられる税金。日本の場合、物品の輸入の際に課せられる輸入関税を指すのが一般的。ものによって課税率は異なる。
  • 所信表明演説:内閣総理大臣が国会の本会議場で行う演説。今後の方針や長としての考えを表明する。
TPPの動向

今回の取材者1

経済産業省 通商政策局 経済連携課 課長補佐 下世古光可 様

TPPが日本にもたらすメリットとはなんでしょうか?

TPPに参加した場合の意義として考えられることは、まず、日本経済を活性化させるための起爆剤となる可能性があることです。従来の貿易では、自国製品を輸出する場合、輸出先の国が関税を設けている場合には安価に輸出することができません。TPPによって参加国間の関税が取り払われたり、関税が削減されることによって、輸出に関わる企業活動などが活発化したり、他国からの輸出品を安価に購入することができます。これにより品目や分野によってプラスになるもの、マイナスになるものはありますが、内閣府では、全体としてGDPが2.4兆円から3.2兆円増加するだろうと試算しています。

また関税等の貿易自由化障壁を取り払い「国を開く」という強いメッセージを示すことで、日本に対する他国からの信用及び関心が高まると同時に、他のTPP参加国などと同等の競争条件で貿易を行うことができます。

なお、参考までに申し上げますと、経済産業省では、日本がTPPに参加せず、韓国が米国とFTAを締結した場合、自動車、電気電子、産業機械の3業種において、TPP交渉参加国である米国市場関連で2020年に日本産品が市場シェアを失うことによる関連産業を含めた影響は、実質GDPが1.88兆円程度減少すると試算しています。

さらに、日本のTPP参加により、中国、EUとのEPA締結にプラスの影響があるとの仮定に立てば、日本がTPP、EU、中国とのEPAのいずれも締結せず、韓国が米国、中国、EUとFTAを締結した場合、自動車、電気電子、産業機械の3業種において、2020年に米国・中国・EU市場関連で日本産品が市場シェアを失うことによる関連産業を含めた影響は10.5兆円の減少、雇用は81.2万人減少すると試算しています。

さらに、TPPは、アジア太平洋の新たな地域経済統合の枠組みとして発展していく可能性があります。TPPの下での貿易投資に関する先進的ルールが、今後、この地域の実質的基本ルールになる可能性があり、交渉に参加することを通じ、できるだけ我が国に有利なルールを作るための機会を得ることができます。逆に、交渉に参加しなければ、日本抜きでアジア太平洋の実質的な貿易投資のルール作りが進む可能性があります。

これらのように、日本がTPPに参加する場合には、政治的・経済的に、国際的に優位なポジションを確保することができる可能性があります。

    <用語解説>
  • GDPGross Domestic Productの略称。国内総生産。一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額。日本の名目GDPは474兆2180億円(2009年)。
  • EPAEconomic Partnership Agreementの略称。経済連携協定。よくFTAと並んでニュースなどで語られる言葉だが、FTAを柱に、FTAよりもさらに締結国間の経済的連携をめざす。FTAが物やサービスの流動を自由に行えるようにする条約なのに対し、EPAは、それに加え、人の移動、知的財産権、政策、投資などの自由化も推進する。
TPPのメリット
  • GDPの上昇
  • 国際的信用・関心の向上
  • 物価の下落
  • 他国と同等の立場で貿易可能


いいことずくめに聞こえるTPP。なにか問題はありますか?

TPP参加の留意点としては、例えば、日本は今まで一部の農林水産品や鉱工業品について、他国の輸出に対して関税をかけるなどにより貿易自由化をしていませんでしたが、TPPに参加した場合は、原則として10年以内にこれらの関税を取り払う必要があります(ただし、極めて限定的ですが除外が認められる可能性があり、最終的には交渉次第です)。その結果、海外産の安い産品がはいってくることによって国内産業等に損失が出ることが考えられます。


11月9日に政府が決定した「包括的経済連携に関する基本方針」において高いレベルの経済連携を推進すると決めた理由とはなんでしょうか?

日本は現在、「歴史の分水嶺」とも呼ぶべき大きな変化に直面しています。世界経済は、中国やインド、BRICs諸国などの新興国経済が急激に発達する一方、我が国の相対的地位は趨勢的に低下するという構造的な変化が進んでおります。実際、2010年には中国が日本のGDPを追いぬくと言われております。また、主要貿易国家間では高いレベルのEPA/FTA網が拡大していますが、日本の取組は遅れております。

このような状況を放置すると、日本の貿易投資環境が他国に劣後してしまい、将来の雇用機会が喪失してしまうおそれがあります。我が国としては、本年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」に基づいて、「強い経済」をめざしています。「強い経済」の実現のためには、市場として成長が期待できるアジア諸国や新興国、欧米諸国、資源国などとの経済関係を深め、日本経済の成長・発展基盤を再構築していく必要があります。

このような認識にたち、本年11月9日「包括的経済連携に関する基本方針」においては、「国を開き」「未来を拓く」ための固い決意を固め、これまでの姿勢から大きく踏み込み、世界の主要貿易国との間で、遜色のない高いレベルの経済連携を進め、また同時に、高いレベルの経済連携に必要となる競争力強化等の抜本的な国内改革を先行的に推進することとしております。

国内改革の具体的な進め方ですが、まず農業分野については、高いレベルの経済連携の推進と我が国の食料自給率の向上や国内農業・農村の振興とを両立させ、持続可能な力強い農業を育てるための対策を講じるため、内閣総理大臣を議長とする「食と農林漁業における再生推進本部」を設置し、平成23年6月をめどに基本方針を決定することとしております。また、同本部において、農作物の競争力強化などに向けた必要かつ適切な抜本的国内対策とその財源を検討し、平成23年10月をめどに行動計画を策定、早急な実施に移すとしています。

また、看護師・介護福祉士などの海外からの人の移動に関する課題や、規制制度改革についても、検討グループを設置したり、行政刷新会議の場で検討を行ったりすることにより、基本的方針や具体的方針を定めていく予定です。

    <用語解説>
  • BRICs諸国:ブラジル (Brazil)、ロシア (Russia)、インド (India)、中国 (China) の頭文字を合わせた4ヶ国の総称。これらの国は近年経済発展が著しく、世界的に注目が集まっている。

世界のEPA/FTAの状況はどうなっているのか

さきほど経済産業省・下世古氏は「主要貿易国家間では高いレベルのEPA/FTA網が拡大していますが、日本の取組は遅れている」と語った。日本の具体的なEPA/FTAの推進状態が気になるところだが、まずEPA/FTAを取り巻く世界の認識、動向を紹介したい。

まず、世界各国・地域では着々とFTA網構築が進められている。その理由はさまざまだ。米国は、リーマンショック以降の荒廃した自国経済を立て直すための輸出倍増計画が背景にある。アジア地域の今後予想される経済発展に期待して、各国がアジア諸国とのFTA締結に乗り気の姿勢を見せているのも理由のひとつ。アメリカのFTA比率は38%、韓国は36%、EUにいたっては76%(EU内を含む)だ。FTA比率とは、その国の全貿易額の中でFTA相手国との貿易額が占める割合で、この数字が大きければ大きいほど、FTAが進んでいることを表す。

対して、日本のFTA比率は16%。これは中国の21%にも劣る。貿易立国でありながら、国内農業の保護を重視する日本の特殊な事情が、世界の潮流に乗り遅れる理由だと言われている。こんな状況の日本を尻目に、FTA競争ではライバルとなる韓国は次々とFTAを結んでおり、すでに米国、EUとFTAを締結。下世古氏が指摘するように、このまま日本が世界的なFTAの流れに乗らなければ、輸出競争でさらに韓国に水をあけられてしまう。その遅れを取り戻すための起爆剤になりえるのが、TPPだということなのだ。

FTAの進渉情報


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