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メインインタビュー : 乙武 洋匡 第1話 Vol.14 - OCN TODAY

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メインインタビュー

乙武 洋匡  第1話

乙武洋匡の~みんな違って、みんないい!~講座 第1回

「僕は聖人君子なんかじゃない。
ただのちょいエロのオッサンだよ」

「障害は不便だが、不幸ではない」というメッセージを引っさげて、大ベストセラーとなった『五体不満足』。あれから12年。両手両足のない体を「個性」と言い切り、八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を続けるのが、われらが乙武洋匡さんだ。障害をネタにした、ちょっぴりブラックな“自虐ギャグ”も、ツイッターで話題沸騰中! さわやかな乙武スマイルを振りまきながら、電動車いすで疾走する乙武さんを追った。

傷つかないように守るのではなく、傷のいやし方を教えるのが教育

── 今回のメインインタビューは乙武洋匡さんをお招きして、あらためて「乙武洋匡とは何ぞや!?」の謎に迫りたいと思います。

乙武:「よろしくお願いします!」

── 小学校教師も務めた乙武さんですが、今度はご友人と保育園を開設されるそうですね!

乙武:「そうなんですよ! その話もたくさんしたいなぁ」

── もちろんです! 全4話のインタビューなので、そのへんの話もばっちり聞きたいと思っております。では、まずなんですけど、乙武さんのツイッター発言、連日、各所で話題を呼んでいますね! いつもドキドキしながら拝見しております!

乙武:「ありがとうございます!」

── 現在、フォロワー数13万人! でも、『五体不満足』の乙武さんのイメージを期待してフォローすると、ひっくり返っちゃいますね。障害にからめた自虐ギャグとか。個人的には、もう大好きなんですけど!

乙武:「いやー、引きますよね(笑)。僕がツイッターを始めた当初は、うける人が3割、引く人が7割だったんですが、今は逆になってきて、うける人7割、引く人3割かな。その3割も、ほとんど新規のフォロワーさんなので、僕がそういうことをつぶやき続けると……」

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── だんだん慣れてきてしまう。

乙武:「そう。実はそれが僕の狙いなんです。別に障害をネタにしたっていいじゃん。たとえば小堺一機さんやモト冬樹さんは、頭髪が薄いことをネタに笑いを取ってますよね」

── 頭皮と同じく明け透けにやってますね(笑)

乙武:「あと、ブラックマヨネーズさんなんか、まさにその路線ですよね」

── 加えてブツブツとかね(笑)

乙武:「だったら例えば何か問題に対して『これはもう手も足も出ないですね! あっ……、でも僕、手足がないんだよねー』とか言って、そういうキャラで笑いを取るのもアリなんじゃないかと(ニヤリ)」

── 乙武さんフォロワーとしては、個人的にですけどアリだと思います!

乙武:「それを、アリだとみんなが認識してくれることによって、『障害=不幸』ではないんだと思ってもらえるんじゃないかと。あえて障害を笑いに変えることで、同じ土俵に上げてしまいたかったんです」

── なるほどー。

乙武:「おもしろいのはね、ラジオの『ハガキ職人』みたいに、ツイッターでも、僕にいいパスを出し続けてくれる人がいるんですよ」

── ツイート職人が(笑)。

乙武:「そう。僕はそういう人のキラーパスに乗っかって、いつもいいシュートを打たせてもらっているんですね」

── 名フォワードなわけですね。決まった瞬間、「乙武ナイス!」の声飛びまくり、みたいな(笑)。そういえば、乙武さんは、以前はネットでご自身に関する書き込みをご覧になることも多かったとか。

乙武:「そうですね。『五体不満足』を出したとき僕は22歳。まだ大学生だったにもかかわらず、ボンといきなり有名になってしまった。そのために、面と向かって僕のことを批判したり、指摘してくださる方がいなくなってしまったんです。『障害のある人にそんなことを言ってしまっていいんだろうか』みたいな躊躇もあったと思います。だから、ネットでの僕に関する書き込みを読むことは、当時の僕にとって "いい薬"でもあったんです」

── ご本人にとっては見るに堪えない、心ない書き込みも多いと思いますが……。

乙武:「そうですね。でも、『なるほどな』と思うコメントも、ときにはあるんです。例えば、『乙武は五体不満足が売れただけで、いろんな仕事をもらえている』という書き込みがあった。当時、自分はスポーツライターという仕事をしていたので『よーし、もっともっと文章力を磨いて、"五体不満足の"という肩書きがなくても仕事がいただけるようにならなきゃ』と思いましたね。ネットは、当時の僕にとって、そういう気づきだったり刺激だったり闘争心だったり、いろんなものを与えてくれる場でもあったんです」

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── 今もそういう書き込みをご覧になるんですか?

乙武:「いえ。今はそういうものを見なくても自分自身をコントロールできるようになりましたので。けれども、20代前半は、あれだけボロクソに言われておいて、こう言うのもなんですけど……ある意味"お世話になった"(笑)という気はします」

── いい話ですね(しみじみ)。

乙武:「でも、(急に声のトーンが上がって)あいつらおもしろいんですよ!! あのね、僕の手の形が、こういう形をしてるんですけど、この僕の手のことを『手羽先』って呼んでるんです。うまいこと言うでしょ!(笑)」

── アハハハハ!

乙武:「『乙武さんの手って、なんか手羽先みたいだなあ』って、心の中でそう思っててもね、面と向かっては、なかなか言えないじゃないですか(嬉)! 言えないと思うんですよね!!(だんだんハイテンションに)」

── は、はい。まぁ、面と向かってだとかなりの緊張感ですけど(汗)。

乙武:「そういえばこの前も、ツイッターで『乙武さん、パソコンはどうやって打ってるんですか?』って聞かれたので、パソコンを打ってる写真をアップして『この手羽先みたいな手で打ってます~』って書いたら、ツイッターが一気にバーーン!と盛り上がって」

── スゴい話だなぁ。

乙武:「同じくツイッターで某テレビ番組の話題になったときに『乙武さんも出演してエロネタにタジタジになってほしいです』って書いてきた人がいて。『いや、俺がエロネタでタジタジにさせてやる』ってつぶやいたんです。すると、『乙武さんが深夜ラジオに出たら、どんな話題になるか興味があります』って返ってきたから、『乙武洋匡のオール(すべて)無いニッポン!』って」

── アハハハハ! いやー、それは別の意味でタジタジです。乙武さんって『五体不満足』をはじめ、たくさんの本を書かれていて、小学校の教壇にも先生として3年間立たれていた。なんか聖人君子のような存在に祭り上げられているじゃないですか。そういうお神輿チックな乙武さんじゃない乙武さんを、もっとたくさんのみなさんに知っていただきたいですね!

乙武:「でも、20代の頃の僕だったら、そんなふうにつぶやくことには抵抗があったと思います。自分はこう見られたいとか、こう見られたくないとか、そういうことにこだわっていた気がするんです。いまでも『乙武さんはすごいからそう思えるんだよ』って、扉を2、3枚隔てたところから見られているような、そんな感覚があるんですけど、当時は、僕自身もそうしなきゃいけないと思っていたところがあって」

── そういう服着せられちゃってた、みたいな。

乙武:「みなさん、きっと僕のことをそう思ってるだろうから、そういう僕でいなきゃいけないのかな、みたいなところがありましたね。だけど今は、自分が信念を持って自分の考えをしっかり発信していけば、しっかりと受け取ってくれている人がいるんだという確信があるんです」

── 自虐ネタをつぶやこうが、エロネタをつぶやこうが、根底は揺るぎないと。

乙武:「作りこんだ自分じゃなくても、みなさんわかってくださる、って思えるようになってきたんです。僕が聖人君子だったら、言ってることが説教くさくなっちゃいますよね」

── そうですね。やっぱり、ツイッターでの自虐ギャグとか、ああいうのがあるからこそ、みんなが入って行けるという部分は確かにあるんですよね。もし、あれがなかったら、神妙な顔で拝聴しなきゃいけない、みたいな。

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乙武:「友達と飲んでへべれけになったり、だらしなかったり、エロかったり……、そういう素の僕をボンボン出して『なーんだー、乙武さんって普通のちょいエロのオッサンなんだー』と」

── アハハハハ! ちょいエロおやじ。

乙武:「『でも、そんなちょいエロのオッサンでも、たまにはいいこと言うんだなー』って。そのほうが、僕のメッセージが胸に届きやすいんじゃないか。そんな気がするんです」

── でも、13万人もフォロワーがいると、乙武さんがちょっとひと言つぶやくだけで大反響があるわけですから、ある意味、大変ですよね。全部が全部いい反響ではないでしょうし。誤解もあれば、批判も出てきますよね。

乙武:「そうですね。ただ、僕はいろんな場面で批判にさらされることに慣れているので、今更ツイッターで自分に対する反論が相次いでも、あわてたり取り乱したりは一切ないんですね(ニコッ)。13万人のフォロワーの方全員に、毎回気持ちよくなるような言葉だけをかけてあげるという、そういうファンサービスをしているわけでもないですから」

── 当然そうですよね。

乙武:「みなさんが『また明日からがんばろう!』と思ってくださるときもあれば、『乙武さん、それはちょっとキツイよ』と思うときもあるでしょう。でも、僕自身、フォロワーの方々に僕とは違う意見をぶつけてもらうことによって、大きな気づきや学びがある。だから、僕の意見がみなさんと違った場合、みなさんの側でも何か気付きや考えるきっかけになってくれればいいなー、と思ってます」

── 乙武さんは障害があっても前向きで、元気いっぱいですよね。逆に今、五体満足な男たちが全然元気ない。なんなんでしょうね、これは?

乙武:「あのー、僕はまず、カテゴライズすることに意味のなさを感じているんですよね。だから、『男が』元気ないとか、『手足ない人は』『障害のある人は』不幸だとか、逆に僕を見て、『障害がある人のほうが元気だ』とか、そうじゃなくて、そうである人もいればそうでない人もいる、という捉え方をしたほうがいいのかなと(微笑)」

── なるほど、たしかに。

乙武:「だから、男性の元気がないって言われてますけど、元気がある奴もいるんですよ。でも、ない人もいる。人によると思います。それに『男は元気ない』って何度も言われちゃうと、『じゃあ、俺も元気ないのかな』って、せっかく出そうと思ってた元気が出しそびれちゃう」

── ここで自分だけ元気になっちゃっても、悪目立ちしちゃうなー、とか(笑)。

乙武:「女性も同じで、女性が元気だって言われちゃうと、元気のない女性は『私もむりやり元気出さなきゃいけないのかしら(憂)』って苦しくなってしまう。だから、カテゴライズしてしまうことって、あまりプラスにはならないんじゃないかな。大切なのは、じゃあ"自分"はどうなりたいのかということですから」

── いったい、どうしたら一人ひとりが元気になれるんでしょうか?

乙武:「まず、一つは教育を変えて行くことだと思っています。これは一つの例ですが、学校でバレンタインデーのチョコレートが禁止されている。もちろん、お菓子は勉強に関係のないものだからダメだよ、っていうのが表向きの理由です」

── その日ぐらい見逃してくれてもよさそうなものですよねえ……。

乙武:「僕もそう思います(ニコッ)。昔は、その日ぐらいはと容認してた部分もあったと思うんですけども、今はホントに徹底してダメなんですよ。で、なぜダメなのかということをベテランの先生におうかがいしたんです。すると……」

── どうしてなんですか?

乙武:「『もらえない子が傷つくから』と、いうのが理由なんですね」

── とんでもないですね。

乙武:「僕の持論は、ちょっと乱暴な言い方をすると、傷つくべきだと思うんです。大人が悪意をもって子どもを傷つけるということは、それは絶対してはいけない。だけど、ふつうにしていれば傷つくような場面まで、ビニルハウスの温室栽培みたいに守ってしまうのは、どうなんだろうかと。僕は、絶望はダメだけど挫折は必要だと思っています」

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── 人間は挫折を通して成長していくと。

乙武:「勉強だけなら家庭教師や独学でも十分やっていけるんです。じゃあ、なぜ学校が必要なのかというと、学校が集団生活だから。そこが自分と他人の違いに気づく場だからなんです。『あいつのほうがスポーツができる』『あの子のほうがかわいい』『なんで、あいつは勉強ができるんだろう』……。で、『俺、なんでこんなモテないんだろう(悲)』って気づく場が、バレンタインデーなのかな、と僕は思ってるんです」

── 一年に一回は、モテないことを気づかせる!と。

乙武:「自分はチョコレートがもらえない。すると、やっぱり男は悔しいんです。じゃあ、どうしたらいいんだと。ふつうにしてれば、顔がカッコイイ奴とサッカーができる奴がモテるんですよねー」

── 小学生男子は、もう絶対そうですよねー!

乙武:「俺は顔もよくない、サッカーもできない……、じゃあ、勉強でがんばったらいいんじゃないかとか、面白いことが言えるようになったほうがいいんじゃないかとか、売りをつくって、なにかしらモテようと努力すると思うんですよね。だから、僕は"傷をつけない"教育ではなく、傷ついた時にどう立ち直り、また再び歩いていけるか、っていう教育をするべきだと」

── その立ち直る手助けをするのが、教師であると。

乙武:「そうですね。実際、学校から社会に送り出して傷を受けたときに、その傷の扱い方を知らないと、そこで、もう立ち上がれなかったり、立ち止まっちゃったりして、それで元気がなくなっちゃうんですよね」

── 修復機能が備わってないんですね。傷ついたまま行っちゃう。もしくは誰かを傷つけてしまう。

乙武:「そうです。だから、子どもを傷つけないように守ってあげるという教育は、一見、子どものことを思っているように見えて、すごく将来の彼らを苦しめてしまう、という気がします」

── 「チョコが1個ももらえなかった」って、後から笑い話になりますからね。

乙武:「その時はすごくつらいかもしれないけど、そういったつらさを、ちょっとずつ経験していくことで、大人になって社会に出たときに、自分のできない部分、苦手な部分に直面しても絶望を感じずに済むと思うんです。昨年9月に僕は『だいじょうぶ3組』という本を書きまして」

── 小学校での教師体験をもとに書かれた、乙武さん初の小説作品ですね!

乙武:「その中にも出てくるエピソードなんですけど……、バレンタインデーの前日の帰りの会で、僕はクラスの子どもたちに、こう言ったんです。『明日はバレンタインデーだね。学校は勉強するところなので、もちろん、お菓子などを持って来てはいけません。ただ、明日だけは先生、怒り方をちょっと変えます。いつもは、お菓子を学校に持ってきたら『コラッ! 何やってんだっ! 学校にお菓子なんか持ってきていいと思ってるのか!』って怒ります。でも、明日だけは『こらぁ~、先生は昨日ダメだって言ったでしょ~♪』って怒ります。あとはみんなで考えて☆』って」

── 乙武先生、粋なはからいですね! バレンタインデーのチョコレートをもらえなくて、悔し涙にくれた男子もいるかもしれません。でも、それが彼の成長のきっかけにつながったかもしれませんよ!


取材・構成:村山 陽・古川 智子(OCNジャーナル編集部) 協力:オフィス ユニーク

乙武 洋匡 プロフィール

PROFILE
乙武 洋匡(おとたけ・ひろただ)

1976年4月6日、東京生まれ。1998年、早稲田大学在学中に発表した『五体不満足』(講談社)が大ベストセラーとなった。卒業後はスポーツライターとして活躍。2005年から東京都新宿区教育委員会非常勤職員。2007年からは杉並区立杉並第四小学校の教師を3年間務め、その経験をもとに2010年9月には小説『だいじょうぶ3組』(講談社)を発表した。

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